純文学小説投稿サイト jyunbun 投稿小説番号027 『前立腺。』  そんなことはないと彼女は、後ろを振り返りつつ反り返り、 イナバウワーかッ! という目で「私を見つめて」と真顔でぼ くにいっているのがわかった。  だから、ぼくはすぐさま使い捨てのターコイズ・ブルーのア イコンタクトで流し目を送ってやったのをきっかけに、自分の 行動に歯止めがかからなくなってしまったことを自覚しながら も、もうすでに左手は、その女の胸の深い谷間に突っ込まれ、 右手もスカートをたくしあげ股間をまさぐっていたが、これは、 すべて自分の意思に反することに相違なかった。勝手に手が動 いているだけなのだ。  女は、まったく抵抗しないで、天を仰ぐと胸の上で十字を切 って何事か呟いた。ぼくは、そんなことにはいっさい構わず、 石畳の上に跪き、スカートのなかに潜り込んで、またぐらに顔 をおしつけていた。 「ママー。ママー」  そう誰かが、耳近くで囁くようにいって、すすり泣いている のが聞こえた。熱いものが頬を伝っている。それが口に入って くる。とっても辛くて、熱い。泣いているのは、自分だった。 泣きじゃくりながら、パンストを破り裂き、Gストリングにち ょっと引いたものの一気にずり下ろして、吸い付こうとした。  が、そこで脳天に凄まじい一撃を食らって目の前が一瞬真っ 白になった。自分がどこにいて何をしているのか、わからなく なるくらい痛かったけれどさらなる地獄が待ち受けていた。物 凄い力で、そう、万力のように左右から首を何かが締め付けて くるのだった。グイグイ絞められながら、そうか、これは女の 太腿なんだということを思い出した。  もう、このまま死んでしまうのもいいかもなんて思った。だ って、今年に入ってから、ずっと電車の人身事故が途切れるこ となくつづいているからで、あれは、今からとんでもない、た とえば地震とか戦争とかの、空前絶後の大殺戮、大惨事が起こ るであろうことのオーメンではないのかと思った。  その信じられないほどの悲惨な出来事の漲る負のパワーが、 ありあまって器からこぼれ出しているのだ。そのこぼれ出して いるのが、事故としてこの世に顕現しているのだと想った。  世界が悲鳴を上げている。  とにもかくにも、あまりにも異常過ぎるのだ。  だから、ぼくのこの緩慢なギロチンもその前兆にちがいない のだ。  ちっちゃな十字架がいっぱいゆるく連結しながら漣のように 揺れている。線香花火がチリチリとはじけるオレンジの火花は、 硝子に亀裂が走るように空にまで触手をのばしていく。  そして、めりめりめりと夜空が割れて星たちがミサイルみた いにふってくる。夜空の天蓋の向こうには青空がのぞいてみえ た。ちっちゃな十字架がいっぱいゆるく連結しながら漣のよう に揺れ、やがて、やさしい調べを奏ではじめる。
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