純文学小説投稿サイト jyunbun 投稿小説番号297 『マナザシ』 『続いてのニュースです。三日前に遺体で発見された、土田佑君八歳は、亡くなる数週間前から、里親に暴行を受けていたことが―――――――』 『現在、養子が虐殺される事件が多発―――――』 『預かっていた親戚の子供を―――――――』 こんなニュースが、最近多い気がする。 不安になる。事情を知ってる人が、「君の家は、大丈夫?」と聞いてくる。 大丈夫。父さんも母さんも、僕を虐殺なんか…しない、と思う。 しない。しない。絶対に、しない…。 (それでも、こわい) あの日のように、僕がまた捨てられるんじゃないかと。 いらない、そう言われるんじゃないかと。 “お前は、誰にも必要とされてない” 頭の中をぐるぐる廻る。 早く出口から出ていけばいいのに、一向に出て行こうとしないんだ。 十年間も壊され続けた僕の心は、もう原型もないくらいにぼろぼろで… 息が、出来なくて。 僕がいることで迷惑になる人がいるなら、僕はこの世から姿を消そう。 僕自身のことなんて良い。目の前に居る人が幸せなら、それで… 「いいんだ」 これが、僕の選んだ道なんだから。 あなたが幸せなら、それでいいんだ。 僕のことなんか気にしないで。あなたさえ… 「昼間から何見てんだ」 不意に、頭上から声がした。 そこには、仕事が休みの父さんがいた。 「勉強しろ。もう、受験生だろ」 言いながら、僕が持っているリモコンを取ろうろする。僕はそれを父さんから遠ざけて、 「公民の勉強」 と言って、音量を上げた。 アナウンサーの声が、大きくなる。 養子の子供が殺された事件を、大声で語る。 『―――――被告人は、動機について、“いらなかった”、“目ざわりだった”などという―――――――』 いらなかった めざわりだった 「…ぁ」 プチン テレビが真っ黒に染まる。 僕ははっとなって、手元を見た。何もない。 父さんが僕からリモコンを奪い、消していた。 そのリモコンを机に置くと、僕の頭に優しく手を置いて、 「問題集でも解いてろ」 と告げた。 見上げると、父さんは優しい眼差しでこっちを見ている。 僕のそばに居てくれる人。 僕を手放すことはない人。 僕が…信じることのできる人。 (そうだよ) こんな人が、僕をいじめるなんて、考えられないよ。 考えられないんだから、 もう、不安になるのはよそう、自分。 「ヒトってのは、どうしてこう、バカなんだろうな」 父さんはそれだけ言って、部屋を出て行った。
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