純文学小説投稿サイト jyunbun 投稿小説番号013 『HIRUNO'S』  僕はウミウシだ、人間ではない、ウミウシだ、いや、人間か もしれない、でも、ウミウシだ、よく分からない。  僕の名前は昼野だ。都合によっては蛭野とも名乗る。陽性の 時は昼野、陰性の時は蛭野、といったところだろうか。ウミウ シの陰陽などどうでもいいが。  こんなウミウシにも一つだけ怖いものがある。いまこうして ぶらぶら歩いていても、びくびく震えている。というのも、ぼ くの唯一怖いものが、道路を無数に往来しているからだ。出会 いたいものには出会いたいのに、出会いたくないものには出会 ってしまう不運なウミウシだ。出会いたいものは高校の頃に惚 れていた文恵だ。彼女は人間だ、断じてウミウシではない。で も、再び会うことなどなかった。怖いものにしか出会わなかっ た。  こんな僕=昼野=ウミウシがこれほど恐れるものとは何だろ う。それは僕である。僕は僕自身が、怖いのだ。僕は僕を恐怖 するあまり、全ての人間を、妄想によって僕にしてしまったの である。ああ、恐ろしい! 道行く人々が全て、僕=昼野=ウ ミウシなのである。ああ、気色悪い!  ふと、歩道を行列で歩いている僕=昼野=ウミウシが、十ト ントラックに引き潰されて、緑色の汁が辺りを充満したのだっ た。トラックを運転していたのはもちろん僕=昼野=ウミウシ であった。ちらっと顔を見たが、僕=昼野=ウミウシは、口端 を歪めてニヤニヤ笑っていた。ああ、なんて奴なんだ!   怖い怖い、そう思って近くにあった駄菓子屋に駆け込んだ。 駄菓子屋には昔懐かしい菓子や玩具が、雑然と並んでいた。僕 はパチンコを手にとって武装した。僕は外へ出ようとすると不 意に、奥座敷の方で、しゃーしゃーという音がしているのに気 付き、そちらの方を見ると、僕=昼野=ウミウシが、刃渡り三 十センチほどある山刀を研いでいた。山刀を正座して研いでい る僕=昼野=ウミウシの足元には、既に殺された僕=昼野=ウ ミウシの、大量の生首が転がっていた。積み上げた生首の下に は、やはり緑色の血が溜まっている。  僕は思わず悲鳴を上げそうになったが、必至にこらえてパチ ンコのゴムに金属球をあてがい、思い切り引っぱって離した。 パチンコ球は、僕=昼野=ウミウシの、片目を射抜いて、後頭 部から突き出て貫通し、絶命した。勝った! 僕は勝利を確信 してそう叫んだ。しかしすぐに、外に無数の僕=昼野=ウミウ シがいる事を思い出し、万歳の両手を下げた。  外はどうなっているだろう? そう思って硝子障子から、こ っそりと外を覗いてみた。すると、凄まじい事になっていた。 外はまるで海辺のように僕=昼野=ウミウシが、びっしりとひ しめきあっていた。手にはそれぞれ、拳銃や猟銃や山刀などを 持っている。鬼のような形相でひしめき合い、互いに殺し合っ ていた。殺し合い殺し合い、殺し合っていた。切り落とされた 腕が飛び、頭部が飛び、大腸が飛んでいた。緑色の鮮血。  凄惨な光景だと思った。酸鼻を極めているとも思った。阿鼻 叫喚の地獄絵図であるとも思った。人外魔境の地底獣国だとも 思った。どうしようかなあ、とも思った。途方に暮れた。  ふと、その光景の中にキラリと光るものがあった。眩しい、 と思った。目を凝らしてみると、それは文恵=人間だった。あ あ、ついに会いたい人を見つけた! しかし文恵=人間は、僕= 昼野=ウミウシに担ぎ上げられて、悲鳴を上げている。僕=昼 野=ウミウシは、彼女をどうするつもりだろう。僕=昼野=ウ ミウシの事だから、きっと陵辱し、蹂躙するのだろう。それも 信じがたいような仕方で。  僕は文恵=人間を、僕=昼野=ウミウシから、救済し解放し ようと決意した。そうして駄菓子屋の屋根に昇り、そこからパ チンコで攻撃を加えた。パチンコの金属球が、一人二人と僕= 昼野=ウミウシを射貫き、殺したが、しかし焼け石に水だった。  ああ、どうしよう。僕は悩んで突っ立っていると、ふと担ぎ 上げられていた文恵=人間が降ろされた。文恵=人間に何をす る気だろう。僕はいきり立って叫んだ。 「文恵=人間に手を触れるな!」  それと同時に一斉に僕=昼野=ウミウシが、こちらの方を向 いた。しかし興味がないようで、再び文恵=人間の方へ向き直 った。  僕は何をしていいか分からなくなって、取りあえずペニスを だして、彼らへ向けて放尿をしてみた。すると「ぎゃああああ あ!」と悲鳴を上げて僕=昼野=ウミウシは、溶けていった。 小便の形のままに溶けていったので、何だか可笑しくなってし まった。  僕は駄菓子屋へ降りていって、水鉄砲を手にとり、そこに小 便を入れて満タンにした。そして、硝子障子を、蹴破って突入 し、水鉄砲を撃ちまくった。水鉄砲から放たれる尿を受けて、 つぎつぎと僕=昼野=ウミウシは、溶けていった。  やがて、文恵=人間の所まで辿り着いた。文恵=人間は、小 便の飛沫のとばっちりを受けていて、黄金に輝いていた。文恵= 人間は気を失っていた。僕は黄金に輝く文恵=人間を揺さぶる と、文恵=人間は目を覚まし、僕の顔を見るなり、悲鳴を上げ たのだった。  僕は何だか頭に来てしまって、信じがたいような仕方で文恵= 人間を陵辱し、蹂躙した。
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